TWICE PartU

機関誌 Vol.11 113ページ

<王将男>


ツーリングクラブ”らいらっく”No.16 王将男
 ガレージの一番奥で、火の入っていない鉄の塊と化している、俺の相棒が眠っている。何処に行くにしても、こいつと共にしてきたが、月日の流れと共に、家庭を持ってしまった俺は、こいつと過ごす時間が減っていき、何時しか動かすことも無くなり、こいつのことを考えることもなく、忘れてしまっていた。
 幸せで平凡な日々が続いていた俺は、ふと、昔のことを思い出して、特に色々な物語のあった、あいつのことを思い出していた。この幸せで満足していけるはずだったが、あいつのことを思い出してからは、いつも、そのことばかり考えている。それなのに、彼女は判っているはずだが、俺に判らない振りをしている。そう、俺は彼女とあいつの選択を迫られたときに、彼女の方を取っていた。しかし、彼女と過ごしている時間で、いま、俺はあいつのことを考えている。
 まだ、彼女と知り合う前に、あいつだけが俺のすべてであり、あいつ無しでは生きていけないと思っていたが、彼女と出会ってからは、あいつのことを嫌っているせいもあり、彼女に隠れてあいつに乗っていた。やはり、隠し事は出来ないもので、乗っていることが彼女に判ってしまい、その時に、彼女とあいつの、どちらかを取らなければならない選択を迫られて、俺はどちらとも大切だったが、自分の気持ちとは違う、彼女だけを取ってしまった。それから、少しの間は後悔はしていたが、時間が経つにつれて、俺の心からあいつのことは消えていき、彼女との幸せな日々が続いていった。
 いま思えば、彼女を取ってから俺は、あいつのことを忘れるために、無理をしていたのだろう。いまでも、彼女との思い出より、あいつとの思い出の方が多く、いつまでも覚えている。
 あいつのことを考えてからは、俺も昔のような気持ちに戻り、また、あいつと共に過ごしたくなり、ガレージの中で、重いシートを取り外して、表に引っ張り出してやり、久しぶりにこいつの姿をおがむことになった。
 それから、俺は暇をみつけては、こいつに入れ込んで、時間が経つのも忘れて、夢中になっていった。そんな俺を見届けていた彼女だったが、さすがに我慢の限界が来たみたいで、突っかかってくるようになった。それでも、気にも止めずにいて、昔の気持ちに戻った俺に彼女は、同じことの繰り返しで、選択を迫ってきたが、いまの結論はひとつで、昔の繰り返しはせずに、前に言えなかった思いを伝えて、後悔したことのつぐないを果たした。
 そんな俺の態度に、耐えられないと思った彼女だったが、かなり無理をしながら見届けていた。それから相棒と、今までのたまっていたものを掃き出すかのように、闇雲に時が過ぎていった。そのときの彼女は、俺の存在すら忘れている態度で、時折見せる淋しそうな横顔が、頭から離れなかった。そんな彼女に対してなにもできずに、自分の都合だけを通していた。

    テーブルの上には、彼女からのメッセージだけが残されて!



この原稿はVOl.4かVol.5に載せるつもりで書いていましたが、日の目を見ないまま、私の昔使っていたパソコンに保存されていました。しかし、地震のために身辺整理している時に見つけて、今回、Vol.11に載せるための手直しをして、4年経った現在の表舞台に出てきました。Vol.2に「TWICE」という題で、やっぴーと偶然出会ったことを書きましたが、その続きみたいなもので、Vol.1の「正しい押し掛けについて」の後継と言った方がいいかもしれません。まあ、この夏でらいらっくも7年目を迎えますが、全然進歩してない私の証明です。PartVは、私の気が向いたらそのうちに書くでしょう。

                      ほな、そういうことで・・・また!