再 会 U(TWICE U)

機関誌 Vol.07 30ページ

<ひじり>


 今年に入ってから俺はツーリングらしい走りをしていなかった。
 しかし、三月になれば”らいらっく”恒例の春ツーリングが待っていたが、それまでには気持ちを抑えられそうになかった。
 仕事は順調だったがこれからもっと忙しく、公私ともに心の休まる日を俺はいつしか求めているのが自分でも分かる気がした。仕事の休みの日に用事で市内を走っているとあちこちでこれから走りに行く人が目に付いた。コンビニの前でたむろしているスクーターレースをしていそうな人々、マクドナルドの駐車場を集合場所にしている人々、彼女を後ろに乗せている人、女性ライダーを間にはさんで走る人々、車とつるんで走る人、テントや大きい荷物を積んで走る人、上から下までをレーサーのように決めている人、猛スピードで高速を突っ切って行く人、信号待ちでこれから行く場所の話しをしている人々などの横を俺は独りいつも走り慣れた道を流していく。
 久しぶりにツーリングにでも行きたい気持ちが一層膨れ上がり、精神的に参っていたが、そこに一本の電話が俺に入った。相手は北海道以来の親友であるやっぴーからであった。やっぴーは次の日の朝に会おうと言い出した。”走りに行ける”とやっぴーの言葉で直感したが朝が早いのが少し気になっていたが、走りに行けるとなればそんなことはどうでもよかった。やっぴーに了解した俺にFZのシングルシートを持ってくるように頼んだやっぴーが俺を誘った本当の目的がシングルシートであることに気が付いたが、わからないふりをして走りに行こうと思った。
 次の日の朝にはいつも目の覚める8時25分より30分程早く起きていた。いつもと同じく10分程で会社に行く支度をし、VFRにシングルシートを据え付けながらエンジンに火を入れてやった。直進する信号を右折し、やっぴーの待ち合わせ場所に向かった。待ち合わせ時間の少し前に着くとそこにはすでにやっぴーが到着していた。シングルシートをやっぴーに渡し、少しだけの会話の後、俺は仕事場へ、やっぴーはしまたにの家に行くと言った。その間の距離を二人で走ることになり、久しぶりに”らいらっく”でのツーリングに俺は嬉しかった。わずか緑四丁目から花博跡に抜ける道のほんの数百メートルの距離であったが、俺にはそれだけで本当に良かったと思っていた。やっぴーと二人で信号三箇所分を走り、その信号で手とクラクションで挨拶を交わすと左折していき、俺は独り仕事へとVFRを走らせていった。また、これから幾日か同じ事の繰り返しだが、今日のこの事が俺にとって忘れがたい思い出として少しでも心の片隅に残っていたら、いつか又、逢える日までは俺の心は少し前までの気持ちのようにはならないだろう。
 これで、俺の心には掛け替えのない思い出が又一つ生まれ、そしてこれ以上の思い出を求めて時間を過ごしていくのだろう。いつか又、巡り会える大きな思い出に!
 北海道ツーリングでたまたま出会えた俺たちが、こんなにも多くの思い出を作っていって、これからも色々な事が起きるが全部が良い思い出として残るような、そんな夢みたいな事をしてくれる皆に出会えた嬉しさを噛みしめながら。

北海道ツーリングで得た大切な思い出と、大切な親友達に

      ”ありがとう”と一言、声に出して言うのが照れくさいので

      心の中で思いを込めていつまでも閉まっておきます。

                                  SO LONG