もとぴー物語 外伝 |
とある夜のことであった。 「あ、もとぴー?俺、一号。今度の土曜なぁ、3時になったんやけど。」 「ああ、そうか。OK、OK、ほな、図書館の前でまってるわ。おまえ、場所分かるか?学校の正門を、入ってすぐの左側やぞ。」 「うん、たぶん分かると思うから、おまえなぁ、エミリィとまゆみちゃんに電話しといてくれ。」 「OK、OK。今、まゆみちゃんと喋っててな、これ、キャッチホンやねん。ほな、また今度の土曜日な。」 私ともとぴーの間でこのような会話があった。 その約束の土曜日、PM3:00を過ぎたころ、 「もとぴー遅いなぁ。寝てんのとちゃうか?一号、悪いけどもとぴーの家にでんわしてくれんか。」 「おう、分かった。でももとぴーのことやから、もうちょいしたら来るんとちゃうかなぁ」 「もとぴー家ですか。一号ですけど、もとぴー君いてますか?」 「あっ、今、出掛けててねぇ。明日にならんと帰ってきませんけど。」 「? 学校に行かれましたか?」 「いえ、学校じゃないですよ」 結局、関西大学に集まったのはやっぴー、しまたに、としえちゃん、鴨吉、それと私の5人だけであった。写真撮影を終えた私達は、学生食堂に行って晩ご飯を食べようということになった。普段、どんな時でもどんな場所でも盛り上がる「らいらっく」であったが、この時はなぜかみんな口数が少なかった。ここに集まった5人の胸の中には、冬の荒野を駆け抜けるようなとても冷たい風が吹いていた。その理由はみんなおつりが来るほどよく分かっていた・・・。 その後、カラオケに行く途中、みな口々に「あいつ、洒落にならんわ」「信じられんヤツやのー」と言っていたが、それは約束を破ったという行為に対してではなく、「友情」が脆くも壊れていったということにみんな憤りを感じていたのだった。 遅れてきたたけちゃんを交えて、わたし、やっぴー、としえちゃん、鴨吉の4人でカラオケボックスに入った。そこはそれほど広くはなかったが、5人では少し寂しい気がした。 「あれっ?もとぴーはどこいったん?」 たけちゃんの何気ない一言が一瞬、皆を無言にした。 「えっ、いやー、あいつなんか用事があるゆうてたわ」 「ふ〜ん、そうか」 私は、本当のことは言えなかった。まさかあいつが私達の約束をすっぽかすなんて考えたくなかった。いや、信じたかった。 帰りの電車の中でやっぴーと二人、11月の予定と12月の忘年会のことについて話した。 「今回のことで、ちょっとあいつの性格が分からんようになったわ。」 「・・・俺な、あいつと4年付きおうてきたけど、今回のようなことは初めてや。なんでやろ?」 「そんな、いいかげんなヤツやないと思うんやけどなぁ」 そう、きっともとぴーは急に重要な用事が入ったに違いない。それで俺達に連絡が取れなくなってしまったんだ。今晩にでも、電話がかかってくるだろう・・・ やっぴーと別れておれは自分の部屋に帰り、電気をつけた。友達は信じなければと自分に言い聞かせてみたが、ちょっと心に引っ掛かるモノがあった。この時、俺の耳に残っていた言葉があった。それは彼の口癖の言葉であった。 「OK、OK」 この物語はおおむね事実ですが、物語の進行上、多少ながら脚色を加えてあります。 |